曼珠沙華
有邑空玖

もう何も視たくは無いのだ。


赭い花を手折りたいと思い、庭へ降りたは良いが
一面の花の群れにふと恐ろしく成ってしまう。
どれを選んでも
触れた途端に枯れてしまいそうだ。
其れを嗤って見て居るのは 君。


何を視ようとも色付かないのならば
此の眼球を君にあげよう。
花を手折る事の出来ぬ指も
妄言に満ちた此の頭蓋も不要。


腐敗してゆくのだ。
もう何も知りたくは無いのだ。
彷徨う儘にいっそ
両足で踏み切れば赭く染まる。


もう何も視たくは無いと云い
もう何も知りたくは無いと云った 僕。
其処で嗤って見て居るのは
君の骨。





自由詩 曼珠沙華 Copyright 有邑空玖 2005-09-25 22:02:28
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