ムーンライト
光冨郁也

夜、
白い、
薬局の袋を、
脇のテーブルに置き、
ベッドで、
眼鏡をかけて、
サティのピアノ曲を、
BGMに、
月が映し出される、
ビデオを観る。

海の、
おだやかな波を、
照らす月。

月は鏡になり、
わたしの半身を映し、
ゆらぐ雲に、
光は、
夜の部屋で、
青い。

月は、
金色の光をはなち、
視界いっぱいに拡がる。

わたしは、
眼鏡を、
枕の脇に置き、
グラスの氷水で、
渇いた喉をうるおし、
波音を聞きながら、
目を閉じる。
はだかの、
肩がこころもとなく、
手をまわす。
雨がふりだし、
わずかに、
湿った風が吹く。
体をまるめ、
膝を曲げる。
伸ばした手に、
白い袋があたり、
床に、
錠剤が、
散乱する。
波に流され、
月に向かう、
ふるえる、
濡れたまつげ、
月の光が、
まぶたを、
通して、
青い。

寝返りをうち、
月の裏側で眠る夜。


自由詩 ムーンライト Copyright 光冨郁也 2005-09-22 21:16:58
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