今日はおじさんの日
石川和広

歩いています夕暮れ
空は赤くありませんでした
曇り空が何度目かの意識で
その姿を現しました

その下が
天王寺の駅前の古い商店街というか横丁で
腕を組んでパチンコ屋の前で立っている
おっちゃんです
汚れたアーケードから薄曇り日射して
いい感じの立ちっぷりです
迷いがないです
手ぶらです
何してるんだろう
またそれが超合金なつよさのはげあたま
そして白いハエギワ
いただきます

本屋の帰り道です
いくつかの重い本をまた買ってしまいました
父は何と言うでしょう
それでもまた
積ん読のもいい感じです
考えがぴきぴきドカーンです
強制収容所です
村上春樹です
しかもトラウマですらあります
シャレになりません
きりがない底であります
少しやりすぎました

そうして歩いていると軽い曲がり角に来て
天にそりかえっているおじさんが歩いています
地軸が変わったのかと思いました
さっき見たのは女子高生
を見たのはエレベータ途中階止まりません
少しオヤジ目線です
オヤジは時に差別語です
さびしいです
何の関係も人間という以外ないのですから

そうです
さっきびっこ引いているおじさんも見ました
福祉番組ではありません
体の不自由なおかつ歩いている人
いっぱいいますよ
昼間っから歩いたり電車に乗ると

そんでタバコくわえて人通りが少なくなってくると
軒下で
黒光りしているおじさんが座っているではないですか
ビニール状のようなものを
よろいかたびらにして
日焼け?肩が見えてます
ひもをつけた赤いものをプラプラさせて
それをじっと見ています
正直意味はわかりません
ダンボールを大地にしたひとつの宇宙
いつから風呂入ってないんだろう

そんな当然のことも考えます
ラブリーです

そうしてる間にラブホのある坂道を下って
静かなサラリーマンが通り過ぎています
何回もおじさんが通り過ぎて生きます
9月22日はおじさんの日としましょう
一人合点です
ためしてガッテン
オヤジギャグです

そうして予備校前には若い人がいます
もうお帰りですか
来た道はもどれませんよ
自分に言いながら

だっておじさんの日なんですから





自由詩 今日はおじさんの日 Copyright 石川和広 2005-09-22 18:09:28
notebook Home 戻る