スクランブル交差点の真中で
ベンジャミン

膨らんでゆく不安を感じていた
知らない人とすれ違うたびに
増してゆく孤独があった

遠のいてゆく誰かの背中に
思いつく限りの名前を呼んで
立ち止まらせたいと思ったのは

それが優しさだと言いたかったからだ
だけど本当は


スクランブル交差点の真中で


うずくまることは簡単だったけれど
要らないもののように置き去りにされることが
淋しくてしかたなかった

誰もが目的を持って歩いているように見える
けれどその多くが進むしかないという決意に
突き動かされているだけなのだと知っていて

そしてそれは正しいと応援してあげたかった
だから僕は


スクランブル交差点の真中で


もみくちゃにされながら前も後ろもなく
見上げた空に逃げ場などないということを
証明してやろうと思った


スクランブル交差点の真中で


もうじき車のクラクションが鳴り響く
いつかそんな夢にうなされたことを思い出して


僕は少しだけ笑った

    


自由詩 スクランブル交差点の真中で Copyright ベンジャミン 2005-09-15 05:29:11
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