行方不明の朝
カンチェルスキス




 揺れるカーテンなんぞに感傷を重ねて
 俺はマンホールの世界にしがみついている
 堤防の下の壊れた冷蔵庫の中から生まれた
 有刺鉄線に刺さったアゲハ蝶を見上げている
 役割を終えた空が黒焦げになってる
 それを夜と呼んだ 長く続いた 今も



 可能性の海は凍りついて知らない奴等の土足にされた
 春夏秋冬 反吐が出る繰り返し 
 見たことのない朝は 皮膚と骨の間でいつも育まれていた
 俺は折り曲げた膝の痛みでひび割れた声を出した
 窓ガラスを伝って落ちる俺の声が腫れ物のように腐った 
 不完全燃焼の笑いを得意げに響かせて
 暗がりで歪な炎を点した
 派手に動かした手足で掻き毟る心臓の音が
 俺の耳の内側で膨張する
 生命が明滅してるようだ



 俺は夢想し射精した
 科学者たちの記憶喪失 発明家たちの脳死
 一瞬の静寂の後での爆発 
 俺には聞こえる血管をたどってうねりうねる
 血染めの細部かき集めた爆発 中心の爆発
 悲鳴の尊き投げやり 俺は発した
 嗚呼 嗚呼 躊躇なく欠落する俺の声が
 新しい価値観を築いて いまだ行方不明の朝を迎え行く
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 嗚呼 嗚呼 躊躇なく欠落する俺の声が
 新しい価値観を築いて いまだ行方不明の朝を迎え行く






自由詩 行方不明の朝 Copyright カンチェルスキス 2005-09-14 14:51:48
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