盗っ人
蒼木りん

家の金を盗んでいた
支払い用の金の入れてある袋
盗んだ千円札で買い物
買ってもらえない
買ってと言えない
憧れ
食べてみたかったものが
手に入る悦び

気づかないうちに
かわらないようにしておくはずだった
今も同じ柄の100円玉50円玉を
くすねていただけだったのが
千円札の束の中から一枚
わからないだろう
わからなかった
回数が増える

見つかった
泥棒の正体
大人はわかっていた

泥棒は
身内のなかで
みじめな晒し首だった

見つかってよかった
まだ
子どものうちに

 盗んだほどのお金は
 働くようになって返しましたが
 いままでに受けた恩恵は
 返しても未だ返しきれません
 
 許すどころか
 今は
 更に与えられるばかりで
 困ります



未詩・独白 盗っ人 Copyright 蒼木りん 2005-09-13 23:51:20
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