幻の花
服部 剛
頼りなげな細い女が
曲がりゆく細い道を
秋風に揺れながら歩いている
茶色く
褪
(
あ
)
せた
麦藁帽子
(
むぎわらぼうし
)
に顔を隠して
道の上に時は無く
女に年齢というものは無く
長袖のワンピースの袖口から
一つの意思を持って生えた白い手は
一握りの夢を入れた小さい鞄の取っ手を握りしめ
歩いてゆく
空に身を隠した誰かの呼び声に
耳を澄ましながら
時の無い道の向こうに
霞
(
かす
)
んでゆく女の細い背中
いつか
道の果てのましろい空に微かに揺れて浮かぶ
一輪の淡い桃色のコスモス
自由詩
幻の花
Copyright
服部 剛
2005-09-12 20:38:47
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