窪んでいる
アンテ


小さな球体のうえに
ひとり立っている
ほんのすこし歩くだけで
一周してしまう
表面は平坦で
どこにもなにもない
踏んだ部分
がすこしだけ窪む
歩いた軌跡が窪んで見える
窪んでいないところ
が気になって
そういう部分ばかりを選んで歩く
まんべんなく踏みつぶして
全体がきれいな球状にもどると
ほっとする
ひと回り小さくなった球体に
ひとり立ちつくす
踏み忘れたところがないか
確かめて回りたいけれど
そうすると
歩いた部分が窪んでしまうから
じっとしたまま
平坦な球体の向こう側
に目をこらす
だれもいない
なにもない
足をそっと上げると
今立っているところだけが
窪んでいる
足の形
に窪んでいる



自由詩 窪んでいる Copyright アンテ 2005-09-12 00:16:07
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