落下する、夏の質量
嶋中すず
膝をたたみ 目を伏せて
思い出すのは
折りたたまれた空に見つけた夏のかけら
黒髪が 風を誘った雨上がり
わたし ここで猫が飼いたいの
雨音に
記憶の落下を
ゆだねてみても
雲間から
ぽつりぽつりと
落ちてゆく
斜面に滑り落ちる雨音が
緩やかなサインカーヴに同期して
ランダムに沈む傘が
夜に拍車をかける
さよなら右の
耳から胸に
折りたたまれた空に
吸い込まれた
夏のかけら
気がつけば朝
昨日より重さを増した空から
微かに香る夏の終わりとファーレンハイト
ねえ
わたし ここで猫が飼いたいの
雨音に
記憶の落下を
ゆだねてみても