背骨の復讐
A道化








聞こえなくなる直前の耳に聞こえる
鈴虫の羽が散らす美しい高音の点線に沿って
無数の枝が折れてゆく、無数の枝が折れてゆき
その微細な山折りと谷折り、その隙間から
水と匂いが逃げ去ってゆきます


どこか足りないこの辺と
どこか余分なあの辺とを
上手に平均出来ずに
次々に生る果実が、音ではなく色で
熟、と、慰め合いながら
乾いた背骨を包み隠し


だから、しとしと
はじめに甘味が起こったところから
苦味に成りゆくと知りながら
先んじて甘味を起こす背骨から、しとしと
狂いが広がってゆくのは正しく
正しく、避けられない復讐でしょう


2005.9.10.


自由詩 背骨の復讐 Copyright A道化 2005-09-10 23:28:47
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