「誰の」
半知半能
いつか彼の匂いを忘れることを
否定は出来ずに
私はただ台所に立って皿を洗っている
泡を水に流しては
交わした言葉の残影を何処へ置いてきてしまったのか
思い出せずに
いる
まるで
「まるで 。」
何だったのか
分刻みに色褪せる記憶を
せめて乾かさないように
涙を流して
しまうよ
あぁ
彼の残した遺言は短く
まっている と
真白い便箋に
カリリ カリリ と
細い字で記されていた
そんなことも あった気がした
自由詩
「誰の」
Copyright
半知半能
2005-09-09 23:57:33