時計の針の音しか聴こえない
カンチェルスキス







 湿ったマンホールの中でひしめきあった豚たちが
 悲鳴を上げている
 チカチカする電灯の合間に
 血走った目が光って見える
 だからどうしようぼくたちは白い粉の洗剤を飲み干して死ぬしかない
 崩れたビルの粉々の破片とぼくらの崩れた頭が
 ごっちゃになって
 アパートの一室の水の入ってない浴槽には
 死ぬ間際のエイリアンが泣きながら
 どこまで走れば追いつくのかわからない
 走れないほどの骨折をしてるわけでもないし
 両足を切断してるわけじゃない切断したい足を
 歩けなくなったらどこにも行かなくていい
 ぬるくなったチーズフォンデュ
 さんざん聞かされた
 溶けてゆく体を信じていつまでも泣き寝入り
 薄い背中には車のフロントガラスの破片が刺さっている
 発射間際の花火に飛び込んで打ちあがったぼくは何色だ?
 発射間際の花火に飛び込んで夜空に打ちあがった花火には
 もうぼくはいない
 歩道橋を歩いていくぼくらの死の葬列が早く途切れますように



 ぼくは天使の輪っかを壊した
 とてもいい気分だ
 ライオンに食われて
 ぼくの血が 
 ライオンの口の中であふれていくのを
 ぼくは感じる
 






自由詩 時計の針の音しか聴こえない Copyright カンチェルスキス 2005-09-07 15:38:19
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