ビニルシート
A道化




雨は降っていなかったけれど
カラカラ
空き缶を蹴った音はした。
爪先が乾いた咳をしたようだったけれど
本当は内臓みたいに湿っていた。
缶の暗い口から
暗い液体がアスファルトに垂れた。
死んでいた。
かつては死んでいなかったとしても
今はアスファルトごと死んでいた。


再発見を遅らせる為に被せようと
丁度傍にあったビニルシートをつまみ上げたら
既に別のアスファルトが死んでいた。
どんな予感もしなかったけれど
昨日被せた場所だった。
喜劇。
だから逃げた。
雨が降っていないからといって
必ずしも笑えるわけではなかった。
だから、繰り返し逃げた。


2005.9.6.


自由詩 ビニルシート Copyright A道化 2005-09-07 00:13:13
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