侵食
落合朱美



ぱさぱさと干からびて
色褪せてしまった
大学ノートを
赤い爪先で繰りながら

ため息ひとつ

セピア色と呼べば
聞こえはいいのだけど
少女じみた丸文字の
拙い言葉の羅列が苦くて

ため息またひとつ

しなければならない事
山と抱えているのに
思い出に侵されてゆくのは
現実逃避したいからで

ため息またまたひとつ

忘れたい過去だらけなのに
捨てられないものの数々
片付かない部屋に
いらだつ心持て余して

ため息・・・

増殖したみたいに
部屋のそこここに
居座り始めたため息に
侵食されるなにもかも





自由詩 侵食 Copyright 落合朱美 2005-09-06 08:14:10
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