眼球の海
恋月 ぴの

2億5千万個の眼球の海へ
君はボートを漕ぎ出す
オールで眼球を叩く度に
そのひとつひとつが
グリグリ音を立て
歪んだ眼差しで君を見つめる


見つめる眼球に映るのは
どこまでも青い空
その天空に穿った真実の窓より
迸る回帰への予感


望郷の想いを水先案内に
2億5千万個の眼球の海へ
君はボートを漕ぎ出す
蠢く眼球は
ザワザワと音を立て


いずる処より旅立ち
いずる処へ還る


眼球の海は始原の胎内奥深く
君の名を呼ぶ
ヴィーナスの叫び声が木霊している


自由詩 眼球の海 Copyright 恋月 ぴの 2005-09-06 07:34:00
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