*卒業アルバム*
かおる

ビルディングに西日がきらきらと煌めき
赤煉瓦の陰影が深くなる
暮れなずむ交差点で
仕事帰りのあいつとばったり
よ、ひさしぶりと
何気ない調子で飲みにいく約束と
携帯の番号を 交換して分かれた

そして あたしは押し入れをごそごそ
ホームシックになると
封印したアルバムを引っぱり出す
教室の窓から校庭を見下ろして
馬鹿笑いしているあいつの輪郭をなぞる
凍結した想いが色あせた写真から 溢れ
あの頃の時間軸に ぴったりと重なった

     お風呂で頭の中から足先まで
     満杯のドキドキに溺れそう
     はやく 電話鳴らないかな

ただいまというあの人の声で
セピア色の懐かしい風景の魔法が溶けたようで
ほろりと 蒼い泪 ひとつぶ
ぼんやりと座り込む影を置き去りにし
バタバタとした日常で飲み込んでいく


自由詩 *卒業アルバム* Copyright かおる 2005-09-05 09:05:06
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