*卒業アルバム*
かおる
ビルディングに西日がきらきらと煌めき
赤煉瓦の陰影が深くなる
暮れなずむ交差点で
仕事帰りのあいつとばったり
よ、ひさしぶりと
何気ない調子で飲みにいく約束と
携帯の番号を 交換して分かれた
そして あたしは押し入れをごそごそ
ホームシックになると
封印したアルバムを引っぱり出す
教室の窓から校庭を見下ろして
馬鹿笑いしているあいつの輪郭をなぞる
凍結した想いが色あせた写真から 溢れ
あの頃の時間軸に ぴったりと重なった
お風呂で頭の中から足先まで
満杯のドキドキに溺れそう
はやく 電話鳴らないかな
ただいまというあの人の声で
セピア色の懐かしい風景の魔法が溶けたようで
ほろりと 蒼い泪 ひとつぶ
ぼんやりと座り込む影を置き去りにし
バタバタとした日常で飲み込んでいく