名前を呼んで
銀猫




その愛しい指が
わたしの名を綴ったからといって
距離は変わらずなのだけど


無機質なディスプレイに
時折運ばれる便りの
密やかなときめき


それは
一群れのシロツメクサから四つ葉を見つけた
そんな胸の明るみに似て
簡単に笑顔を誘う



眠られぬ夜の
他愛なき会話

少しの時差と
季節の先行と

こころでしか聞けぬ声と
目を閉じたときだけの
表情と
互いの背の後ろを
きっと同じく流れるうたと



恋の語らいも無く
さらわれてゆくこころなら
せめてわたしの名前を呼んで



おやすみ、のあとに
わたしの名前を呼んで



距離は変わらずなのだけど





自由詩 名前を呼んで Copyright 銀猫 2005-09-04 08:48:17
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