*透明な残像*
かおる

夕闇へと向かう 全ての生き物が息を潜め
ゆるゆると夜への侵略を開始している瞬間
そのエアポケットのような ときのはざま
きっと羊水の記憶を刺激するのでしょうか


トクントクントクントクントクントクンと



あぁ どうしてヒグラシが鳴き始めたのか



今年最後の夏の後ろ姿はひときわ大きく
桃源郷へのきざはしを隠しているようで
あのひとからの招待状を受け取ったのは

だれ


 桜貝
  の
   薄紅色
   の
   その夏
      の
     名残
        の
    斑紋が薄れていく前に
         透き通る蒼に
     吸い込まれてしまいたい


ガラスの靴を忘れていったはずなのに




二重写しの鼓動がひとりと半分
境界線を越えて
朧なまるみの輪郭を埋めていく


自由詩 *透明な残像* Copyright かおる 2005-08-31 17:09:48
notebook Home 戻る