夕焼けが足りない 9
AB(なかほど)

  


いや

つぶやくようにふるえると
夕焼け

きみのくちびるが夕焼け

のように
まわりの景色をちょうどいい速度で染めてゆき
滲ませ

くちびるから夕焼け

とけるように
いつまでも終わらない


いつまでも
いつまでも足りない
くちびる


アーケード奥の魚屋には射し込まない
夕焼け
がある

きみのくちびるなんか夕焼け

にしてしまえ
たらいいのに
ただ見つめているだけ

染まる
のは 心
滲む
  まま


きみのくちびるが夕焼け
きみのくちびるを夕焼け
きみのくちびるへ夕焼け
きみのくちびるから夕焼け
あふれるように消える
きみのくちびるは夕焼け


それでも
まだ
足りず



いや

つぶやくようにふるえ
夕焼け


  


自由詩 夕焼けが足りない 9 Copyright AB(なかほど) 2003-12-26 05:26:16
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夕焼けが足りない