空蝉
しらいし いちみ
湿った風が吹く朝に
君は薄い火を灯した幹から両手を離す
種の保存の掟は果たせたのだろうか
君の生き方は純粋で幸せだったのだろうか
最後は雲の切れ目から青空が見えたのだろうか
残り蝉の連歌は君に届かない
公園で遊ぶ子等の声も聞こえない
凝視した目の中を秋雨前線は通過して行く
瞳は黒から青へ変わり
地球を背に
宙
(
そら
)
を腕に抱え込んで塵へ帰る
体の透けた子蟹が傍らを横切って行く
また夏の空気は少し冷えて来た
自由詩
空蝉
Copyright
しらいし いちみ
2005-08-27 18:04:14