初空列車
からふ

とてもかたい列車で
おもちゃみたいな街から出て行く
レールをわざと踏み外して
けたたましく列車はのぼる
神秘だねって笑う暇もなく
割れた空へと進んでいく



にわか雨が過ぎていくのを
窓を閉めることもなく
まばたきもせずに見ている
生暖かい雨は
まるで馬鹿みたいだったから



放っておいた
飲みかけのサイダーの中で
雨粒が炭酸と踊っているのに
気づかない振りをして
飲み干してしまった



石鹸の香りが列車を見上げている
終点を知らずにのぼっていく
ビー玉になってしまった街は
うさぎみたいで
撫でようと手を伸ばそうとしたけれど
列車はやっぱりとてもかたくて



そのままおもちゃは片付けないで
そうっと散らかしておこうと思う



下を見ると
今まで知らなかった空が
さみしそうに笑っていた







自由詩 初空列車 Copyright からふ 2005-08-25 16:56:40
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