笑う人
山内緋呂子

朝 通勤途中の人に
夜 犬の散歩をする人に
僕は 笑う

会社では
「あなたは愛されて育ったでしょ。」
と よくいわれる

僕は 生まれてすぐ人に預けられた

母に 社割で 花柄のカットソーを買うと
「家族仲がよくていいわよね。」
と いわれた

これは
ボタンもファスナーもなく 綿100%で洗濯しやすいので
老人ホームにいる 母のために
買った

「笑ってばかりだとなめられる」
と 友達がいう

なめられる ってどういう意味だろう。

僕は
幸せになるために笑う

大好きな女優が
できちゃった結婚をした
僕は
「どこまで幸せなら気が済むんだ。」
と 思い
祝ってやれなかった
彼女も隠した不幸があるかもしれないのに
祝ってやれなくて


泣いた


僕はいつも
アパートに着いて
ドアを閉めて

「明日笑う」養成ギブスをはめて暮らしてきた

わらの出た黄色い壁に 彼女のポスター
野菜を炒めるところは
いつもと同じだけど

今日は
彼女のために
ギブスをはずして寝よう







明日笑う


自由詩 笑う人 Copyright 山内緋呂子 2003-12-24 17:18:49
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