よる さくら
はな 




その布の上にはきらきらしたかたまりが
透けながらならんでいて
あたしはときどき つまんで くちにいれます




がっこうからかえると また
本のあいだからピアノがはいだしてきた
家にはだれもいないので
ふたりでどこまでもネオンをながめた
その内に
ピアノのからだはふくらみを取り戻していた

あしのつめ
のびすぎたところ
ひかるたび
まなざしの奥に 夜が揺れている


食べたいものはないかと 
たずねるとき
遠くで電車が影をとびちらせて
そのかけら 目に入ってしみたような
あわい はなをへやに降らせた
だからもうくちのなかはいっぱいになり
また ちらちら
遠くで なにかが点った




その布はほんとうは
はじいた鉄線のように
ひっぱればかんたんに なにもかも 床に落ちます




もうすぐ おとうさんの帰ってくる時間
ちいさな沫と ともに

夜の雲は
おともなく ものおとをすいよせる
このせまい窓枠を
この夜の はやさを









自由詩 よる さくら Copyright はな  2005-08-23 23:46:01
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