「あいうえお」(「五十一のデッサン」より)
たもつ

(あ)


っという間もなく
それはもう

ではなかった

語られることのないおとぎ話は
ただ
さらさら
さらさら
と音めいていて

僕の両手はいつも
掴まえることが
下手くそだった



(い)




であるために分離された
二本の線のことである

だから


いつまでも悲しい

そう思っていた少女は
ある日星になった

それからこの世界では

を見て涙するものは
いなくなった



(う)

うっすら
ふりつもる
それは
うそ
もしくは
うそ
っぽいもの

あなたからの手紙

は、いつものように
うつくしく
わんきょくして



(え)

列車から降りると
駅の周りは一面

の花でいっぱいだった
若い駅員が鉢植えの

の花に水をあげている
あれはきっと
春と呼ばれる季節だったに
ちがいない
君が僕のてのひらに

と、小さく書いたのも



(お)


と目が合って
そのクルリンとしたところの穴が

の目だと初めてしった
とりあえず

っと
驚いて
それから
もう
夜だった





自由詩 「あいうえお」(「五十一のデッサン」より) Copyright たもつ 2003-12-24 10:14:29
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