高級娼婦になりたかった女は
虹村 凌

少しだけロリータ少女になったらしい
風の噂で聞いたんだ
彼女はロリータ少女に








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「私はね、高級娼婦になりたいの」
彼女はそう言った
「そうか」
そう答えた
そうとしか答えられなかった
煙草を吸う 煙を吐く 精一杯だ



「私はね、政界を動かすような高級娼婦になりたいの」
彼女は詳しく言った
「そうか。愛してるよ」
そう答えた
そうとしか言えなかった
髪を撫でる 事しか
出来なかったんだ


彼女は思ったよりも容易に股を開き
数々の男を飲み込んできたらしい
(願ったり叶ったりだったよ)

「高級娼婦になりたいの」
彼女は微笑んだ
「愛してるんだよ」
俺は呟いた
煙草はとっくに燃え尽きて
フィルターが露出している事に気づかず
下を向いて缶コーヒーを蹴飛ばした
高級娼婦になりたい彼女は
甘い煙草の香りが好きだった














*****


高級娼婦になりたかった彼女は
ロリータ少女になったらしい
風の噂で聞いたんだ
今はあの煙草を吸わなくなった


自由詩 高級娼婦になりたかった女は Copyright 虹村 凌 2005-08-22 14:46:29
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