ノート(25Y・11.10)
木立 悟




    人さし指と中指で
    腕についた血を軽くはさむ
    もう流れないそのかたち
    なかば閉じかけた三本の指のあいだから
    口と目のない白い髪の女のにおい
    肩に重さの無い顎を乗せる誰かがいる



    ブリューゲルから二本足で立つものをすべて消した時
    鉱物で描かれたゴッホがあらわれる
    上からの光 下からの光 またたく鉄塔
    かしずく石の鳥の背が道を産む
    赤銅 白 灰 湯を冷ましてできた水
    野の傷は治らず ただ見えなくなる



    ふたつに割れた草の方舟
    どこまでも道の片方に並ぶ
    ふたつに割れた光の亡骸
    雪にまみれ道の片方に並ぶ
    どこまでも道の片方に並ぶ







未詩・独白 ノート(25Y・11.10) Copyright 木立 悟 2005-08-21 16:58:46
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