はがれゆく胸のひとひら
前方後円墳

白い胸に
その小さな胸に脂をぬりこんで
肉体の陰を分泌した皮膚が
蛍光灯に反射している
緩みきったくちびるを
うるさい胸の
ぼんやりとした亀裂にあてがい
だらしなく
涎を垂らし
指でなぞり 指紋で汚し
爪を立てる

胸が静かになると
ぬるくなった水をのんで
あたたかい夜だと気づく
耳を通り抜ける
奥歯のなまぬるい噛み合わせ
何かを忘れてしまったように
カラコロ と震える骨、に震える
音を探している
干からびた音を 探している

そのあたたかい胸の
また繁殖し 終える
白内の黴の
剥がれ 落ちる
さまを
誰からも語られることがないまま
震えるひとひらを聞きわけるため
舌の上で溢れる唾液を澄まし
胸の
忘却を果たす


自由詩 はがれゆく胸のひとひら Copyright 前方後円墳 2005-08-21 00:44:21
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