スキアシガエルの入定
The Boys On The Rock


サハラ砂漠で夏眠中のカエルは
とてもつらい

遊牧民に掘り起こされ
厚い安らかな粘膜のシートを
乱暴にこじ開けられ
たっぷりと溜め込んだ皮膚の水分を
絞りとられるのだ

たいせつな水分を搾取された 彼は
ふたたび
乾いた砂の上に放り出され
不眠と乾きにさいなまれながら
鮮やかな瑪瑙のヘビに見つからないうちに
また
砂の中へ隠れなければならない

だが
水分を強奪されたスキアシガエルは
面倒くさそうに
脚を組んで 瞑目した

どうした
はやく かくれなきゃ と
思わず声をかけると
彼は私を一瞥しただけで
また目を閉じた

彼はいま
サマーディにいたり
再生しない幸福にいたったのだ

私は
ミイラ仏になった砂漠のカエルを
とっくに忘れられた古代の神殿跡の中に安置し
遊牧民達の守り神にしたのだった


自由詩 スキアシガエルの入定 Copyright The Boys On The Rock 2005-08-20 11:35:40
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