輪切り
なつ


君が隣にいなくなった 

という事で
分かりやすく
こころの真ん中に開いた穴

わたしの不器用な小指が
簡単に出入りするくらいの
せつない喪失感

まぶしい季節を
思い出せば
今だってひとりじゃないんだけど

贅沢な黄色が
なかなかしぶとくて
埋まってはくれない





ずっと憧れたままではいけないですか
ここから
遠い南国を想いつづけてはだめですか

綴るゆびがふるえて
ぽたぽたと
消せない染みをつくる

意地は
かわいげのない皮は
全部むかれてしまって
缶詰は
ぬれる

ああ
ここは 日当りが悪いね







鋭利な優しさで
輪切りにされた思い出を
そっと
舌にのせてみた

噛みしめたら
あまずっぱさがあふれて
まるで
パイナップルの 涙をながす。


自由詩 輪切り Copyright なつ 2005-08-18 21:12:17
notebook Home 戻る