晩夏
大覚アキラ

汗染みだらけの帽子を目深に被って
叩きつけるような陽射しの中
スーツ姿のサラリーマンの流れに逆らうように
足早に歩くあなたを見かけました
頬には汗が幾筋も流れ
まるで涙のように見えました

あなたには
帰る場所もなく
待つ人もいないと
みんなはいうけれど

あなたの
過ぎ去った日々のなかには
帰る家があったのでしょう
愛した人もいたのでしょう

あなたが
どこから来たのかは訊ねません

あなたが
どこへ行くのかも訊ねません

人波の向こうに
呑まれるように消えていく
あなたの後姿を見送りながら
私にできることは
この
夏の終わりにしては強すぎる陽射しを
少しでも和らげてくれるささやかな木陰で
あなたのために
ひとつのベンチが空いているといい
そう願うことだけでした






自由詩 晩夏 Copyright 大覚アキラ 2005-08-18 15:11:22
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SEASONS