ロシナンテのように
恋月 ぴの

僕は一頭のロバ
痩せこけて貧相な一頭のロバだけど
君の重い荷物を背負って
毎日運河沿いの道を
とぼとぼ歩む

僕が何か粗相をしたときは
右手に持ったサボテンで鞭のように
僕を叩いておくれ
背中にアザができるまで
おしりが赤く腫れるまで

僕が何か君の悦ぶことをしたときは
左手に持った甘い蜜のツボから
一滴の蜜を恵んでおくれ
僕はお皿を舐めまわすように
品の無い音を立てながら啜ってあげる

僕は一頭のロバ
君の言う事なら何でもしてあげる
心優しい一頭のロバ

運河沿いの道は誘惑だらけ
サンチョパンサが
何処からともなく現れて
僕の耳元で囁き悪戯に誘うけど
君の笑顔を思い浮かべ、じっと耐えぬく

僕は一頭のロバ
ロシナンテのように君を背中に乗せて
運河沿いの道を歩む
風車の前で僕はふと立ち止まり
くるくると回る羽根車
眺めているよ


自由詩 ロシナンテのように Copyright 恋月 ぴの 2005-08-15 09:21:16
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