ノート(Hollow)
木立 悟




思うことなく
信じることなく
ただ願いながら歩きます
わたしたちは無く
あなたたちは無く
ひとり


目をひらくものがいなければ
目をつむるものがわからない
そんなことはありませんから
片方だけ灯りを消したあと生まれた
背の高いひとつの影のほうへ
手のなかの鍵は還っていきます


信じることなく
願いつづけることは
どこにもたどりつかない背中のかたちで
それは
ただ
響くのでした


とどまる理由もなく
歩きつづけ
歩きつづける理由もなく
歩きつづけ
手のひらは
空に触れたのでした


わたしたちはいない
あなたたちはいない
涙を涙のとおりにひらいて
何度もとにもどしても
ひとりたりない
ひとりたりないのでした


生きなくてもいいのでした
それでも生きていたのでした
それは生きてきたのではなく
見える笑み 聞こえぬ笑み
見えぬ笑み 聞こえる笑み
そのときそのままの笑みに囲まれて


歩いているのでした
気がつくと
歩いているのでした
雨のなかを かたちが流れてしまっても
音は何度もひとりをひらき
ひとりをひとりにもどすのでした






未詩・独白 ノート(Hollow) Copyright 木立 悟 2005-08-14 23:37:45
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