しずく
霜天

その角を曲がると
いつだって彼女は立っている
そこに、体に付いたしずくを払って
その度に小さくなっていくようだ
しずくが地面に消える分だけ
ビルはその背丈を伸ばして
猫たちの逃げ込む隙間を増やしていく
それが彼女の望む世界だとして
麦藁帽子の隙間から
僕はその世界を見ている

一番、二番、三番
ゴールテープはいつだって遠かった
僕らが夢について語り合う時間
その間に街は、変わり続けようと夢を見ていた
複雑に絡み合った路地裏
潜り抜けると
小さな家
隙間なく絡みついた蔦の群れ
その緑を空にまで、伸ばそうとしている


彼女は、そこを潜り抜けたらしい
ひとつ、ふたつ、しずくを落として
空は確かに、緑色に染まった


その角を曲がって
いつからか彼女は消えてしまった
街はすっかり隙間だらけになって
どこへでも行ける代わりに
もうどこへも行けないかもしれない
これが彼女の望む世界だとして

ゴールテープはどこへ行ってしまったのだろう


自由詩 しずく Copyright 霜天 2005-08-13 17:54:42
notebook Home 戻る