ノート(それがなにかわかりません)
木立 悟




家のそばに浮かんでいる
家と同じかたちのふちどり
それがなにかわかりません


晴れた日にも曇りの日にも
空に無数にきらめく粒子
それがなにかわかりません


まじわりの途中でも訪れるもの
書きとめるために投げ出されたまじわり
それがなにかわかりません


ひとりでひとりを憎みながら
ひとりでひとりを選んでいる
それがなにかわかりません


言っても言わなくても伝わらないもの
伝わることなどけしてないもの
それがなにかわかりません


わたしのからだはどこにもなく
わたしに良く似た容れ物がある
それがなにかわかりません


つねにつねに外からだけ来て
ぽつんと内にたたずんでいる
それがなにかわかりません


いつも感じるわけではなく
いつもがいつもを流れてゆく
それがなにかわかりません


たいせつなものもひともなく
変わりつづける迷い火を追う
それがなにかわかりません


誰もいない容れ物を
遠い音が歩いてゆく
それがなにかわかりません






未詩・独白 ノート(それがなにかわかりません) Copyright 木立 悟 2005-08-13 16:21:39
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