雨の物語
藤倉けい

今朝から窓の外はずっと雨模様なんだ

雨の日の午後、きみは変にしんみりしてる

ぼんやりとあれこれ、いろいろ思いをめぐらしてる

雨は不思議だねってきみは言うんだ

そして 

喉が渇いたきみはジュースを買いに外へ出るんだ

ちょっとそこまでの道のり

ほんのわずかな

だけど 雨は思いのほか強くて

穴のあいたビニール傘を右手に持ったきみは

徐々に湿っていく体を感じてる

そして雨音に包まれ青く染まった静かな路地を一人歩いてると

まるで遠い旅にでも出てるかのように

感傷的になってるきみがいるんだ

きみはじっと前を見据えて歩いてるつもり

だけど

その瞳には遠い思い出が揺れている
 
そして

左手に硬貨を握り締めたまま

何台もの自販機を通り過ぎ

部屋はただ遠ざかっていくばかり・・・

肩を濡らして歩くきみ

もう二度と部屋には戻らないんだ・・・



自由詩 雨の物語 Copyright 藤倉けい 2005-08-12 22:07:57
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