夏コミ
AB(なかほど)
なんの因果か
ガロイ先輩の手作り冊子を抱えて
汗をだらだら流して
どうせモノレール沿線ならば
もっとオシャレな停泊所とか
競馬場へと
ふらふらと行きたかったのだが
コミケの意味さえも知らずに
そこでは生身のラムちゃんが見れる
と聞いたのもので
中味も知らない冊子を
所定の場所にドンと置く
と
待ってました
とばかりに
とは言え、一言の発声もなく
白い手がいくつも伸びて
ただガロイ先輩の冊子の山は
夏の氷のように無くなって
最後の一冊を手にとり
どうしてこんなものが
と皆目見当もつかなくなったところで
代々木駅ホーム掲示板のカリスマなんだよ
と
チブラさんが明後日の方向を見ながら
ぶつぶつと教えてくれた
そこで初めて
チブラさんのラムちゃんを想像する
(中略)
きっと会場のどっかで様子を伺っていた
ガロイ先輩は
ただ今来ましたよ、とばかりに
ああ、もうその冊子、無くなるの ね
と鼻をポリポリしながら
聞いてくる
僕は渾身の力を振り絞って
そうだっちゃ
と答えたが
そこから何かが生まれたのかどうか
僕の履歴書の
そこんとこだけ未記入のまま
だっちゃ
fromAB
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