音  終章
木立 悟




水辺に落ちる星
熱が流れを変えてゆく
土がくずれ 沈む
砂が砂の上をゆく
積もりつづける見えないものが
音になってゆく


目の奥にある水と鏡が
ひとつの影を追いかけている
たどりつけば終わることを知りながら
午後から夜へと
同じかたちのまま燃えてゆく雲を見つめる
音にも光にもなる波が
独りの踊りのように降りてきて
静かに夜の花びらを喰む


堕ちるものたちが歌う
ふいにやってくるものたちが歌う
空の流れに 空より高い流れに
見つめる先に 心の方位に
たとえ言葉が消えていっても
音を受け取るものたちは
光を持つ闇として
闇を持つ光として
触れることなく触れあい
満たすことなく
満たされてゆく




未だ太陽のにおいの残る夜更けに
人々が集うともなく集う家には
長い旅を終えた音のひとつひとつが
ろうそくの火のようにゆらめいている








自由詩 音  終章 Copyright 木立 悟 2005-08-12 17:59:54
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