蝉の夜
かや

蝉は夜企んでいる
おてんとさまが顔を見せたら
どんな風に吠えてやろう
入道雲を飛び越えて
知らぬ街まで響かせようか!

蛙たちの雑談に
まぎれた樹の幹
食い込むほど爪を立て
ひっそりと隠れ待つ
焼けすれ閉じられた羽の
なんと頑ななこと

それでも
知らず知らず思考の果ては
土の世界へ潜り還って

蝉は
いかにも!
我々とおんなじじゃあないか

蝉は夜企んでいる
休む枕もなく
ふと吹いた涼風に
震えるものかと堪えながら
願わくは
プラスチックの虫箱に
どうか収まることのないよう



自由詩 蝉の夜 Copyright かや 2005-08-12 12:05:50
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