「 冷たい紅茶。 」
PULL.







それが誰なのか、
記憶を探れば出てくるが、
誰が誰であったか、
この部屋では関係ない。

窓の向こうに手を伸ばそうとも、
扉の向こうに声を掛けようとも、
ひとつも思わない。

ただこの部屋で、
過ぎゆく世界を見続けたいだけ。

窓の向こうを通り過ぎるのは、
もはや知らない顔。

扉の向こうから流れるのは、
どこか懐かしい声。

ティーカップには冷たい紅茶。
るらり波紋が広がって、
琥珀の中、
鮫が溺れていた。













自由詩 「 冷たい紅茶。 」 Copyright PULL. 2005-08-12 08:28:59
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