海に、行かない
A道化






わけもなく
海に行かない


青ざめた
この肌の下の水脈に海の素質があるとしても


夏において
情熱的な、情熱的な
世界中の観察眼と観察眼が合い続けているとしても


その日最初の空を浴び始めた砂浜と海が、或いは
その年唯一の熱の時代を内に感じるあらゆる表面と表面が
互いの質感を確かめ合う、その為にある作為的で急進的な空間としての
夏だとしても


わけもなく
海に行かない


ああ、わけもなく海に行かない身体、海に行かない心、を、ここにいる、
ここにいる、ここにいる、という物証として床や壁に押し付けたら
私の夏は、決して決して海へ行く途中ではあり得ないという
青白い、成功例だ



2005.8.9.


自由詩 海に、行かない Copyright A道化 2005-08-09 23:33:06
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