なんてこった!
プテラノドン

記憶喪失の男が、電話ボックスのなかで
世界を止めるダイヤルを回し続けている。

正午頃。―その日はとても暑かった。
路上で倒れた女がえっちらおっちら運ばれていく。
その後彼女がどうなるか、私達はよく知っていたのだが
ふいに降り出した大雨に、ミミズも蟻も流されてった! 

記憶喪失の男は、電話ボックスのなかで
世界を止めるダイヤルを回し続けていた。

その時、何処かで電話のベルが鳴る。
もしも誰かが受話器を上げたなら
その日、世界は止まったはずだのに
なんてこった!誰も気づかなかった。

次の日、少年が一匹の蝉をつかまえた。すると
世界は静まり返って動かなかった。が、
もちろんそうさ!誰も気づかなかった。
あの男でさえも―いいや、記憶喪失の男はダイヤルを…


自由詩 なんてこった! Copyright プテラノドン 2005-08-08 22:12:26
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