くらげの日々/知っている
石田 圭太



+TATOOの悲しみ

 水商売をもれなく売女と呼ぶ
 その在庫表の端には
 くたびれたドラえもんが描かれている

 規則正しく働ける
 抜け目ない線とスイッチの裏の
 せわしない背中を知っている






+二ャー

 真っすぐな強がりは
 時に真っすぐな弱味をみせる
 嘘まで真っすぐまるわかり

 まるでポッキー

 「二ャーと呼ばれるのは嫌いだ二ャー」
 と呟く






+デート商法

 今もなお彼女と呼ぶ






+ギターマン

 独創的なポーズでチューニング
 なんだか今まさに音楽を奏でているみたい
 
 観客と呼べるものは
 作業中の僕と招き猫くらいのものだが






+夜の紅一点

 ほどなくシンプルな花の種が
 アスファルトの海に飛んでいった
 街には強く咲く花があるというが
 根の割に身体は小さいという
 
 およそ検討もつかない胃痛の空を
 今も飛ぼうとしている






+合わせ鏡

 懐かしい声がするので振り返ってみると僕が居た
 しかもふたり
 目を凝らすと少しずつだけ歳が違っていたが
 それが僕らの決して縮まらない距離だった





+君

 美化してしまうので特に書かない






+やわらかい骨

 僕には骨がある

 骨つぼがあってしまう

 残ってしまうがためがんばっている

 君

 にも骨があって

 やっぱり残ってしまう

 残ってしまうがため

 やがて僕は君と一緒に骨つぼに入りたいと思う





 くらげ

 には骨がない

 死ぬと海に溶けていってしまう

 やたらでかい骨つぼ



  に隠される

 が

 あるいはそのためにがんばっているのかも知れない





自由詩 くらげの日々/知っている Copyright 石田 圭太 2005-08-08 07:54:56
notebook Home 戻る