くらげの日々/知っている
石田 圭太
+TATOOの悲しみ
水商売をもれなく売女と呼ぶ
その在庫表の端には
くたびれたドラえもんが描かれている
規則正しく働ける
抜け目ない線とスイッチの裏の
せわしない背中を知っている
+二ャー
真っすぐな強がりは
時に真っすぐな弱味をみせる
嘘まで真っすぐまるわかり
まるでポッキー
「二ャーと呼ばれるのは嫌いだ二ャー」
と呟く
+デート商法
今もなお彼女と呼ぶ
+ギターマン
独創的なポーズでチューニング
なんだか今まさに音楽を奏でているみたい
観客と呼べるものは
作業中の僕と招き猫くらいのものだが
+夜の紅一点
ほどなくシンプルな花の種が
アスファルトの海に飛んでいった
街には強く咲く花があるというが
根の割に身体は小さいという
およそ検討もつかない胃痛の空を
今も飛ぼうとしている
+合わせ鏡
懐かしい声がするので振り返ってみると僕が居た
しかもふたり
目を凝らすと少しずつだけ歳が違っていたが
それが僕らの決して縮まらない距離だった
+君
美化してしまうので特に書かない
+やわらかい骨
僕には骨がある
骨つぼがあってしまう
残ってしまうがためがんばっている
君
にも骨があって
やっぱり残ってしまう
残ってしまうがため
やがて僕は君と一緒に骨つぼに入りたいと思う
くらげ
には骨がない
死ぬと海に溶けていってしまう
やたらでかい骨つぼ
に隠される
が
あるいはそのためにがんばっているのかも知れない