戦火の子(2)
Fujiwara Aki

 
 母恋し
   朝げの仕度する姉は
          かまどに火をくべ 涙、乾かす



 一欠けの パンを盗んだ妹に
          ただ涙出て 拳下ろせず

 
 イヤリング
     明日の見えぬ 母、渡し
           受け取る娘、瞳輝く


 日当の わずかな小麦 一握り
          かかえる僕に飛び付く 弟


 黒煙の向こうに見える 公園跡
          ああ、いつの日か揺れるブランコ


 血塗られた純白の衣装 端握り 嗚咽もらした
     姉の晴れの日


 刻まれた記憶の波に呑まれずに
           新たな波を子に託す父

  
 濁り無い 明日に夢持つ子供らの 大空に響く コーランの声

 


短歌 戦火の子(2) Copyright Fujiwara Aki 2005-08-06 16:24:23
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