可笑しな話
A道化





灯りを付けない夕刻の
人のいない部屋の沢山の影が
角からふやけて
海になってゆく、深い、暗い
海になってゆく


肺に溜まる海って
苦しいよね、でも
呼吸と引き換えだもの
しかたないよね


黙りこくった海が
扇風機に薄く千切られて
あ、そういえば私も千切れていて
でも既にバラバラだから
此処には誰もいないと思っていたんだ


完治って
難しいよね、でも
癒されることなんかなくてもジュースが飲みたくなるの
眠る前にはサプリメント齧ってしまうの


肺にいっぱいの海、深い、暗い、呼吸に混じるバラバラの海
そこに沈殿するバラバラのバラバラの私、それでも、時々
ジュースが飲みたくなるの、サプリメントを齧ってしまうの
嗚呼、もしかして、私まだ
まだ何かにすがりたいんだとしたら
すごく、可笑しいよね



2005.8.6.


自由詩 可笑しな話 Copyright A道化 2005-08-06 15:43:01
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