もう　いいかい。

もう　いいよ。


草にまけるかと思った
あんまりにも長いあいだ　かくれていたから
風が強く吹くたびに私の肌は傷ついた

動くことはできない
みつかってしまうから

葉と葉のすきまからオレンジがこぼれる
まぶしくて目をあけていられない
耳のそばを通る虫の羽音におびえながら
目を閉じて　耳を塞いだ

遠ざかるかすかな足音

もう　いいよ
もう　捜しにきて
暗くなるとみえなくなる

草も土もブランコも色が濃くなる
私の色も濃くなって
夜と混ざってみえなくなる
私も　もう私がみえない


もう　いいかい。

もう　いいよ。


もう　ここにはいないけど。