Old Crow Blues
恋月 ぴの

朝目覚めると新宿花園神社へ
俺はお参りにいく
行き別れた一人娘マリーとの思い出
眠らない街の大晦日
毎年繰り出したマリーとの除夜祭
今は一人石畳に座りこむ

俺の縄張りは三丁目から御苑界隈
コンビニのゴミを漁るのが日課
最近は廃棄処分の弁当よりも
食べ残しを漁る毎日
痰唾のついた週刊誌もついでに漁る

これでも昔は詩人だった
荒地の鮎川や中桐達と良く議論をしたもんだ
朝まで交わした言葉は生き生きと
熱い思いが眠気を吹き飛ばしてくれた
今はもう総て忘れたような気がする

俺は黒いらしい
生まれた時から黒いから
差別されているとは思わなかった
一人娘のマリーは何故私は黒いのと
何故友達と違って私だけ黒いのと
俺の胸を叩いて泣いたっけ

そろそろ羽繕いをしよう
煤で汚れた翼を羽ばたかせ
俺は御苑の森へ戻る
人生を捨てた俺のねぐらへ戻ろう
マリーの面影だけを胸に抱いて
一人静かに森へ戻ろう


自由詩 Old Crow Blues Copyright 恋月 ぴの 2005-08-05 07:28:49
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