に隠される
石田 圭太
くらげはもう水みたくなって
やがて海になるだろう
溢れる 空想を両手にとって
きみは穴を掘っている
隣で海を耕しながら
私はそれらを見つめてあげる
構わず 両手に未来を注いで
きみは穴に種を蒔いた
平らな 和みを 並んで見つめる
消える幸福みたいなやさしさ
※
ほろびかかったこうふくのなかで
猫が九回生きてみせると
ネオ*テニーに憧れた生きものや物たちは
おのおのの大切なものに
たくさん愛でられる空想をした
ときには愛したり
あるいは愛し合あったり
かれらをまもりたいと願う傍観者もあらわれたが
しばらくすると
おのおののホホにはえくぼがうかびはじめていた
海のどこかで声がしていた
外から声がしていたからだ
あるいは重なっていたのかも知れない
しかし耳の良すぎるかれらの眼は
外を上手にのぞくよう出来てはいなかったし
届こうとするうちに乾いてしまう事は
代々の掟のようなものでわかっていた
やがて身体が溶けてしまう頃には
底に置き忘れられた片足の
長靴のように不確かな気持ちだろう
そんなこともお互いには関係がなかった
そもそもがそういう仕組みではなかったからだ
※
明るくなる瞬間の一瞬の赤さが慰むんだときみ
ああ、そうだねえとわたし
同じ時間に空を見ていたのだが
なんだか違うねえと気付いたら
きみの蒔いたやさしい種を
やさしい波で流してあげよう
海にあこがれきみはくらげの
やがて骨になるだろう