に隠される
石田 圭太





くらげはもう水みたくなって
やがて海になるだろう





溢れる 空想を両手にとって
きみは穴を掘っている
隣で海を耕しながら
私はそれらを見つめてあげる

構わず 両手に未来を注いで
きみは穴に種を蒔いた
平らな 和みを 並んで見つめる
消える幸福みたいなやさしさ





ほろびかかったこうふくのなかで
猫が九回生きてみせると
ネオ*テニーに憧れた生きものや物たちは
おのおのの大切なものに
たくさん愛でられる空想をした
ときには愛したり
あるいは愛し合あったり
かれらをまもりたいと願う傍観者もあらわれたが
しばらくすると
おのおののホホにはえくぼがうかびはじめていた


海のどこかで声がしていた
外から声がしていたからだ
あるいは重なっていたのかも知れない
しかし耳の良すぎるかれらの眼は
外を上手にのぞくよう出来てはいなかったし
届こうとするうちに乾いてしまう事は
代々の掟のようなものでわかっていた
やがて身体が溶けてしまう頃には
底に置き忘れられた片足の
長靴のように不確かな気持ちだろう


そんなこともお互いには関係がなかった
そもそもがそういう仕組みではなかったからだ





明るくなる瞬間の一瞬の赤さが慰むんだときみ

ああ、そうだねえとわたし

同じ時間に空を見ていたのだが

なんだか違うねえと気付いたら

きみの蒔いたやさしい種を

やさしい波で流してあげよう





海にあこがれきみはくらげの
やがて骨になるだろう







自由詩  に隠される Copyright 石田 圭太 2005-08-05 03:19:15
notebook Home