踏みのめらかし踏みすべり
佐々宝砂

俺は「ありがとう」と言った。

朝起きてからずっと目の焦点が合わなくて俺は窓を開けて空は高曇りで
ノーテンキに雀が鳴いていて医者に電話をかけたら予約がいっぱいでど
うしてくれるんだ何か起きたらどう保証をしてくれるんだと息巻く元気
もなく目をこすったら白かったけれどとにかく薬はまだたくさんある。

買い物は簡単に済んだ。誰も怒ってくれなかった。

店でもいいけれどもっと簡単に済むところが楽でいい人がたくさんいて
大騒ぎになってそれが簡単にできて楽なのがいい楽になりたいのだ抑え
てくれるのはベルトなのか腕なのか縄なのか薬なのかなんでもいい懐か
しい緊縛のイメージはミルクの匂いがする。

朝の校庭はミルクの匂いがした。

拒まれているので拒むことにしたがどうすればいいのかはよくわかって
いてそうするとそれでそうなることもわかっていたけれどそうするしか
ないからそうしたら教室は血汐校庭は血汐手も腕も足もすべては血汐の
赤さの赤鬼踏みのめらかし踏みすべり怒号を受けて踏みすべり。

踏みのめらかし踏みすべり。

望んだように夢みたようにやってきたそれはこの腕をとり懐かしい緊縛
あれほどにほしかった緊縛がおちてきてそれはおそろしいほどの安心を
もたらしたので楽になって息ができるようになって楽になったので俺は
校庭の血汐に気づく。

だから俺は「ありがとう」と言った。


自由詩 踏みのめらかし踏みすべり Copyright 佐々宝砂 2005-08-01 16:14:41
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