かなしい夏
塔野夏子
かなしい夏 ?
夏の首すじが
眩しい
何もすることのない午後
空気さえ発光している
しなやかな夏のゆびさきが
飽きもせずあやとりしてる
夏はあの木立のてっぺんあたりで
太陽に唇を盗まれる
かなしい夏 ?
秘密の庭
したたるような緑の
茂みの陰で
夏は誰かと
逢瀬を重ねる
そんな昼下り
時はいつも
だから
オレンジ・マーマレイド色に
なってしまう
かなしい夏 ?
しなやかな夏のゆびさきが
飽きもせずあやとりしてる
嵐の雲 ひとつ
太陽が機嫌をそこねたみたいに
光線のぐあいがちょっと変になる
嵐の雲 ふたつ
空のいろもなんだかおかしい
風も妙にけだるい温度
嵐の雲 みっつ
夏はなんにも意に介さずに
一心不乱にあやとりしてる
嵐の雲 よっつ いつつ
とりつかれたみたいに
あやとりしてる
嵐の雲 むっつ ななつ
ネイティヴアメリカン(ナヴァホ)のあやとりに「嵐の雲」というのがある。
雲の数をひとつから順に、ふたつ、みっつ……と増やしてゆくことができる。
個人サイト「Tower117」掲載
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夏について